インタビュー

低価格モジュールに潜むリスク! 必要な対策は?

太陽光モジュールの低価格化が進むにつれ、発電量のばらつきによる電力損失には、これまで以上に考慮する必要がでてきた。また、海外で進む安全対策にも、日本は後れをとっている。これらの問題の解決策としても、次世代パワエレは有効だという。

まず実践すべきは
太陽光発電所の品質向上

現在、日本ではバーチャル・パワープラントの実証事業や蓄電池を活用したソリューションなどが進められていますが、その前にやるべきことがあると私は考えています。それは、太陽光発電所を長期的に安定稼働できる設備にするということです。

太陽電池モジュールの低価格化が進み、部材コストが非常に抑えられるようになりました。それ自体は歓迎すべきことだと思います。しかし、そこには潜在的なリスクが存在しています。ストリング内のモジュール間で発電量にバラツキが生まれると、全体の発電量が低下してしまいますが、製造コストを抑えて製造されたモジュールの場合、バラツキのリスクをこれまで以上に考慮する必要があるでしょう。高効率なモジュールに変更した場合にも、同様に他のモジュールとの間でミスマッチが生まれ、発電量の最大化が阻まれてしまいます。

だからこそ、事業性を高めるために、ミスマッチによる電力損失を抑え、発電所のポテンシャルを最大限に発揮できる次世代パワエレの導入が求められているのです。発電所全体のコストと次世代パワエレ導入で向上するパフォーマンスを比較すれば、決して割高なものではありません。

米国で進む安全対策
日本では対策が不十分

また、次世代パワエレは安全性の面でもこれからの日本の太陽光発電に欠かせないものです。

日本では安全性の面で、水没や火災などへの対策が十分ではありません。

例えば、米国では、モジュールの漏電や発火事故が起きたことを契機として、即時の発電停止=「ラピッドシャットダウン」ができることを建築物の太陽光発電設備の必要条件とする規程が設けられました。消防士の保護や火災の延焼防止を考慮して、MLPEの需要が伸びました。

日本でも、水没した太陽光発電設備による感電防止について、経済産業省とJPEAより警告が発せられました。昨年2月に発生した太陽光発電設備を備えた倉庫の火災事故も記憶に新しいと思います。しかし、未だ十分な規制が設けられておらず、安全性に対する配慮が行き届いているとは決していえません。
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PROFILE

 

東芝エネルギーシステムズ株式会社
エネルギーアグリゲーション統括部 技術エキスパート

稲葉道彦氏

工学博士。一級施工管理技士(電気、管)。株式会社東芝にて電子材料、環境材料の研究開発と分析に長年従事。研究開発センターの環境技術・分析センター長、経営変革シニアエキスパートなどを歴任。2009年より現職の太陽光発電システムエンジニアリングに従事。

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